【研究のポイント】
・抗がん剤を溶かす液体の浸透圧と粘度を最適化することで,リンパ行性送達法を用いた転移初期リンパ節治療の抗腫瘍効果が高まる。
・適正な浸透圧・粘度の抗がん剤は、腫瘍で狭まったリンパ洞を拡張させ,リンパ洞の腫瘍に薬剤を送達することができる.
・抗腫瘍効果は,リンパ節内での腫瘍の進行度、薬剤量、薬剤の注入速度に依存する。
【研究概要】
抗がん剤を静脈から投与する全身化学療法は、転移リンパ節への治療効果が限定的です。東北大学大学院医工学研究科腫瘍医工学分野のアリウンブヤン・スフバートル特任助教と小玉哲也教授らの研究チームは、転移初期段階でがん細胞が最初に転移するリンパ節(センチネルリンパ節)に直接抗がん剤を注射する、リンパ行性薬剤送達法を用いた化学療法の開発に取り組んできました。この新たな治療法に適した抗がん剤の物理化学特性を検討した結果、浸透圧700~3,000k Pa、 粘度40m Pa・s以下の薬剤が転移初期リンパ節治療に適しており, 抗腫瘍効果が高まることがわかりました.その理由として,高浸透圧・高粘度の抗がん剤は、腫瘍で閉塞したリンパ洞を拡張させ,リンパ洞で増殖した腫瘍に薬剤を送達できること,リンパ節内の貯留性に優れていることが明らかとなりました.さらに,抗腫瘍効果はリンパ節内の腫瘍の進行段階、薬剤の注入速度、投与薬剤の量に依存していることもわかりました。
本研究成果は、2022年1月31日 Cancer Science誌(電子版)に掲載されました。
詳細(プレスリリース本文)
【お問い合わせ先】
(研究に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
腫瘍医工学分野
教授・小玉 哲也 (こだま てつや)
電話番号:022-717-7583
Eメール:kodama@tohoku.ac.jp
(取材に関すること)
東北大学大学院医工学研究科
Eメール: bme-pr@grp.tohoku.ac.jp