研究科紹介

グローバルな医工学研究・教育拠点としての医工学研究科の未来

東北大学 大学院 医工学研究科
研究科長・教授

西條芳文

西條芳文

 東北大学は10兆円規模のファンドの運用益により支援を受ける「国際卓越研究大学」の候補として選定されました。国際的に卓越した(=世界トップレベルの)研究を行う大学という意味では、創立当初から「研究第一主義」を掲げている東北大学は、その理念の通り、より一層研究に注力していけばよいように思えます。しかし、世界トップレベルの研究成果を上げるには、学生・教員が研究に集中できるような学修・業務改革、若手研究者が独立して研究できる環境の構築、学生・教員・職員など東北大学の構成員全てがグローバルに活躍していくためのキャリア設計など、大学の大きな変革が必要で、医工学研究科もその変革の真っただ中にいます。

 時々間違えられますが、私たちは医工学研究所ではなく大学院医工学研究科です。したがって、教員は自らが大きな研究成果を上げるだけではなく、学生の教育により医工学研究を発展させることも重要なミッションとしています。現在、講義・実習科目の再編成、オンライン/オンデマンド授業活用など、効率的な講義により学生が研究に集中できる時間を増やしており、これらの改革は同時に教員の研究時間も増やしています。また、学生は単に教員の研究を手伝うのではなく、学生自身が1人の独立した研究者として研究を行うことで、修了後に研究機関や企業の研究分野の即戦力となる責任感・発想力を育成しています。

 「国際卓越研究大学」の重点項目として国際化も求められており、大学院生の留学生比率を40%に高めることや国際的に卓越した外国人教員を招聘することなどが公約として掲げられています。医工学研究科では、これらのいわば「輸入」だけではなく「輸出」を重視した国際化も進めていきます。現在も行っている学生の海外の大学・研究機関への短期留学・インターンシップを拡充していきます。また、すでにオンライン授業により海外の大学との共同講義を開講していますが、今後さらに提携大学を増やし、海外の大学とのダブルディグリー、ジョイントディグリーなどの制度も拡充していきます。

 日本の文化は「和」の文化と言われます。これは国際化の対極にあるように思えますが、医工連携にとって「和」は非常に重要です。医学と工学という異分野の研究者が同じ空気を吸うことで「和」が生まれ医工連携が成熟していくというポリシーの元、理工系を卒業した学生への医学・生物学教育、医学・保健・生物系の学生への工学教育だけではなく、学生を大学病院に派遣して臨床ニーズを探索し、新たな医療機器を創出するという医療機器開発実習など、「和」を重んじた教育を実践しています。また、産業界との「和」も重視して、技術者のための医学・医工学教育プログラム:EMBEEや、多くの共同研究・受託研究を行っています。

 医工学研究科は、医工学研究や医療機器の開発だけではなく、健康の概念を変え人間の生活をより豊かにすることを目指しています。学生の皆さん、医療従事者の皆さん、そして企業の皆さん、私たち医工学研究科と一緒に医工学の「和」を世界に広めていきませんか?

令和6年4月1日

医工学研究科の理念

医工学は、数学、物理学、化学などを学術基盤としこれを総合した工学によって医学・生物学を革新する教育・研究の学問領域である。医工学においては、工学の基礎理論・知識の集積や実践的技術および医学・生物学や臨床における基盤的知識と専門的技術を駆使して、生命体の構造と機能を解明することにより、医学・生物学とともに工学の進展を図る。

医工学研究科は、東北大学の理念である「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」のもと、国際水準の医工学研究を推進し、これを通して学生に基盤的・先進的知識と技術を習得させ、世界を先導できる研究者、高度技術者を育成し、学術的基盤の革新および医療の根本的改革を通して人類社会の福祉と発展に貢献することを使命とする。

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1. 本大学院の教育目的と目標

医学と工学の融合領域における広い視野と深い知識を基本としつつ、豊かな社会の実現を目指し、自ら考えて研究を遂行し、医療・福祉における科学技術の発展と革新を担うことができる創造性と高い研究能力を有する人材育成ならびに高度な専門知識を有する技術者育成を教育の目的とする。これを達成するため、各課程の教育目標を以下のように定める。

前期課程
研究遂行に必要な、複合領域の幅広い基礎学力を習得したうえで、研究課題を独自の発想により解決する研究能力と高度技術を備えた人材を育成する。
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後期課程
医療・福祉における社会的ニーズを視野に入れた研究課題を新たに設定し、独自の発想から展開解決する研究能力を有するとともに、将来にわたって自己啓発をしながら、リーダーとして広い視野から研究を指導・推進できる人材を育成する。

2. 教育方針

医工学は、医学・生物学と工学の境界領域を埋めると共に、これらを深く融合させることによって革新的な医学と工学の発展を目指す学問分野であり、単に2つの領域の知識の吸収や2つの分野の協力ではなし得ない、新しい学問分野であるといえる。そのため、医工学研究科においては、深い工学的知識や技術、および幅広い医学・生物学、医療の知識の習得ばかりでなく、これらによって生体や医学、医療に関する新しい原理の発見や工学技術の開発などを可能にする思考過程を構築させる教育を行う。

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研究センター

役職一覧

研究科長 西 條 芳 文
教育研究評議員 吉 信 達 夫
教育研究評議員 田 中 真 美
副研究科長 田 中   徹
研究科長補佐 (教育担当) 渡 邉 高 志
研究科長補佐 (研究・コンプライアンス担当) 石 川 拓 司
研究科長補佐 (財務担当) 薮 上   信
研究科長補佐 (将来構想・病院連携担当) 新 妻 邦 泰
研究科長補佐 (男女共同参画担当) 田 中 真 美
研究科長補佐 (広報担当) 吉 信 達 夫
がん医工学センター長 小 玉 哲 也
医療機器創生開発センター長 西 條 芳 文