研究科紹介

技術の力をもって未来の医療をデザインする

東北大学 大学院 医工学研究科
研究科長・教授

永富良一

永富良一

病院では脳や関節に問題があればMRI検査, 食道や胃に問題があればファイバースコープ(内視鏡)検査、胆石があれば内視鏡手術、股関節に障害があれば人工関節の置換術が行われます。今では当たり前の検査や治療も50年前はほとんど実用化されていませんでした。当時画期的だった医療技術は物理学・化学・生物学など様々な領域の新しい研究成果を背景に工学と医学の連携によって実用化されてきました。

東北大学では古くから工学と医学などの連携により現在の医療機器の基盤技術の研究開発が行われてきたため、この領域に多くの研究者がいました。2008年には日本で初めてそのような研究者を集約して医工学研究科を発足させ、一丸となって工学の力をもって保健医療を変革する研究教育体制を整えました。医工学研究科では以下の4つの強みを持つ人材育成を目指しています。広く人間の健康を支える基盤技術から実用化まで一連のステージを理解し、その中でしっかり自分の専門分野を確立すること、専門外のエキスパートたちとのコミュニケーションがとれること、保健医療の場で新しい価値を創造するデザイン思考を有すること、事業化が社会に研究成果を届ける重要なプロセスであることを理解することです。

設立から11年が経過し、悪性腫瘍が転移したリンパ節の薬剤効果を高める治療手段、欠損した骨の融合を促進する補填材料、母体表面から胎児の心電図を安全に計測する方法など革新的な医療技術の実用化を実現してきました。これまでにない新しい歯科治療技術の実用化も間近です。高度半導体技術を利用した医療機器高機能化開発基盤も整備されました。

次の10年、20年にどのようなことが起こるでしょうか? 新しい感染症や災害への対応、長寿社会のあり方、なによりも人類が限られた資源を有する地球上にあってどのように幸福な社会を作ることができるのか、課題へのチャレンジは冒険といっても過言ではありません。材料科学、情報通信技術、生命科学の進歩により人の行動から生命のメカニズムに至るまで多くの情報を収集することができるようになりました。しかしまだそれらを理解し活用するにはたくさんの課題を解決する必要があります。未来の健康社会とそれを支える新しい保健医療をデザインし、そのために大学でしかできない新たな価値を生み出す研究を強力に推進する必要があります。世の中を変える力がある最新の研究成果にあふれている東北大学で、既成の枠組にとらわれない研究を志す学生の皆さん、若手の研究者、若くなくても意欲あふれる方は是非一緒に挑戦していきませんか?

令和2年4月1日

医工学研究科の理念

医工学は、数学、物理学、化学などを学術基盤としこれを総合した工学によって医学・生物学を革新する教育・研究の学問領域である。医工学においては、工学の基礎理論・知識の集積や実践的技術および医学・生物学や臨床における基盤的知識と専門的技術を駆使して、生命体の構造と機能を解明することにより、医学・生物学とともに工学の進展を図る。

医工学研究科は、東北大学の理念である「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」のもと、国際水準の医工学研究を推進し、これを通して学生に基盤的・先進的知識と技術を習得させ、世界を先導できる研究者、高度技術者を育成し、学術的基盤の革新および医療の根本的改革を通して人類社会の福祉と発展に貢献することを使命とする。

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1. 本大学院の教育目的と目標

医学と工学の融合領域における広い視野と深い知識を基本としつつ、豊かな社会の実現を目指し、自ら考えて研究を遂行し、医療・福祉における科学技術の発展と革新を担うことができる創造性と高い研究能力を有する人材育成ならびに高度な専門知識を有する技術者育成を教育の目的とする。これを達成するため、各課程の教育目標を以下のように定める。

前期課程
研究遂行に必要な、複合領域の幅広い基礎学力を習得したうえで、研究課題を独自の発想により解決する研究能力と高度技術を備えた人材を育成する。
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後期課程
医療・福祉における社会的ニーズを視野に入れた研究課題を新たに設定し、独自の発想から展開解決する研究能力を有するとともに、将来にわたって自己啓発をしながら、リーダーとして広い視野から研究を指導・推進できる人材を育成する。

2. 教育方針

医工学は、医学・生物学と工学の境界領域を埋めると共に、これらを深く融合させることによって革新的な医学と工学の発展を目指す学問分野であり、単に2つの領域の知識の吸収や2つの分野の協力ではなし得ない、新しい学問分野であるといえる。そのため、医工学研究科においては、深い工学的知識や技術、および幅広い医学・生物学、医療の知識の習得ばかりでなく、これらによって生体や医学、医療に関する新しい原理の発見や工学技術の開発などを可能にする思考過程を構築させる教育を行う。

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研究センター