東北大学 大学院 医工学研究科
研究科長・教授
西條芳文
東北大学の医工連携の1ページに出てくる高聲聴診器(マグノスコープ)。今風にいえば、電子聴診器+スピーカーで多くの医学生に同時に心音・呼吸音を聴いてもらうための装置です。これは、医学部小児科の佐藤彰教授と工学部電気工学科の抜山平一教授の医工連携で開発され、昭和4年(1929年)発行の醫科器械學雑誌第6巻に掲載されました。マグノスコープ完成までには数年を要したでしょうし、この雑誌の発行元である日本医療機器学会は大正12年(1923年)に設立されたので、東北大学の、あるいは日本の医工連携が始まってから100年が経過し、今まさに次の100年を迎えようとしていることになります。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」私は医工連携成功の秘訣はここにあると思っています。1960年代に世界初の超音波心臓断層図を開発し、私の師匠でもある抗酸菌病研究所(現在の加齢医学研究所)の田中元直名誉教授は「毎日、片平丁(電気通信研究所)の菊地喜充教授のところに通って研究した」とおっしゃっていました。本や論文で得る知識だけでなく、その場の空気から得られる知識が本質的な理解につながるという意味でしょうか。
医工学研究科ではこのポリシーを現代風にアレンジし、さらにスタンフォードバイオデザインからもインスピレーションを得て、工学部出身の学生を病院に送り込み、臨床ニーズを肌で感じながら課題探索する医療機器開発実習を行っています。また、多くの医師をはじめとした医療従事者を工学系研究室に引き入れ、様々な医工学研究を行っています。
コロナ禍において、オンライン授業、テレワークなど新しいワークスタイルが生まれてきました。かつての飲み会での他愛のない話から始まる共同研究の機会が減ったことは、私の世代にとってやや寂しいことですが、その代わりにオンラインツールを駆使することで、バーチャルに「虎穴に入る」ことができるような時代になりました。次の100年は、物理的な距離という限界を超えて、多くの国々の多くの人々と密接なコミュニケーションをとることで、学際的・国際的な医工連携をより一層深めていくことが求められます。
医工学研究科は、単に「医」と「工」が融合するだけではなく、「医」と「工」が大きな化学反応を起こし、医工学を中心とした学際領域を発展させることを理念としています。そして、医工学研究や医療機器の開発だけではなく、健康の概念を変え人間の生活をより豊かにすることを目指しています。学生の皆さん、医療従事者の皆さん、そして企業の皆さん、私たち医工学研究科と一緒に次の100年を創っていきませんか?
令和4年4月1日
医工学は、数学、物理学、化学などを学術基盤としこれを総合した工学によって医学・生物学を革新する教育・研究の学問領域である。医工学においては、工学の基礎理論・知識の集積や実践的技術および医学・生物学や臨床における基盤的知識と専門的技術を駆使して、生命体の構造と機能を解明することにより、医学・生物学とともに工学の進展を図る。
医工学研究科は、東北大学の理念である「研究第一」、「門戸開放」、「実学尊重」のもと、国際水準の医工学研究を推進し、これを通して学生に基盤的・先進的知識と技術を習得させ、世界を先導できる研究者、高度技術者を育成し、学術的基盤の革新および医療の根本的改革を通して人類社会の福祉と発展に貢献することを使命とする。
医学と工学の融合領域における広い視野と深い知識を基本としつつ、豊かな社会の実現を目指し、自ら考えて研究を遂行し、医療・福祉における科学技術の発展と革新を担うことができる創造性と高い研究能力を有する人材育成ならびに高度な専門知識を有する技術者育成を教育の目的とする。これを達成するため、各課程の教育目標を以下のように定める。
医工学は、医学・生物学と工学の境界領域を埋めると共に、これらを深く融合させることによって革新的な医学と工学の発展を目指す学問分野であり、単に2つの領域の知識の吸収や2つの分野の協力ではなし得ない、新しい学問分野であるといえる。そのため、医工学研究科においては、深い工学的知識や技術、および幅広い医学・生物学、医療の知識の習得ばかりでなく、これらによって生体や医学、医療に関する新しい原理の発見や工学技術の開発などを可能にする思考過程を構築させる教育を行う。
研究科長 | 西 條 芳 文 |
教育研究評議員 | 小 玉 哲 也 |
教育研究評議員 | 田 中 真 美 |
副研究科長 | 田 中 徹 |
研究科長補佐 (教育担当) | 渡 邉 高 志 |
研究科長補佐 (研究・コンプライアンス担当) | 石 川 拓 司 |
研究科長補佐 (財務担当) | 薮 上 信 |
研究科長補佐 (将来構想・病院連携担当) | 新 妻 邦 泰 |
研究科長補佐 (男女共同参画担当) | 田 中 真 美 |
研究科長補佐 (広報担当) | 小 玉 哲 也 |
がん医工学センター長 | 小 玉 哲 也 |
医療機器創生開発センター長 | 西 條 芳 文 |